私の夢

数年前、
海のように深く、宇宙のような広がりを見せる楽譜を前に
金縛りにあったように何も弾けなくなった私がいました。

ピアノの前に座って、ただひたすら涙を流すだけの私でしたが
ふと手にしたブレンデルの著作が
私を自筆譜の研究へと導いてくれました。

毎日吐き気がする程自筆譜と向かい合い、文献資料を読みあさった結果
伝統という大きな壁が私の前に立ちはだかり
日本人が西洋音楽を演奏する事があまりに無謀なことに思え、
今度こそピアノを辞めようと思い詰めていました。

そんな時に出会ったのがヴァイオリニストのGil Shahamです。
彼の演奏は私に”音楽は耳ではなく、心に直接語りかけるものだ”と教えてくれました。
また彼の演奏により、人の心は時代や民族をはるかに超越した不変のものであり
その心を表現する音楽もまた永遠なのだと知りました。

「人の心に届く演奏がしたい・・・」

これが今の私の夢です。

<おしゃべりプチコンサートVOL.1 序文 1999年7月>


♪プログラム
モーツアルト:ピアノソナタK.300d
ショパン:ノクターンOp.48-1
ショパン:ノクターンOp.48-2
エルガー:愛の挨拶
ドヴォルザーク:ユーモレスク
ガーシュイン:プレリュード第3番
アイルランド民謡:ロンドンデリーエアー
クライスラー:愛の喜び
クライスラー:愛の悲しみ
バッハ=ブラームス:左手の為のシャコンヌ



戻る