音楽雑誌から専門的な研究書に至るまで、クラシック音楽に関する文献を読むと 作曲家の恋愛についてかなり重点的に書かれている事に気付きます。 学生の頃、音楽史の講義の中で作曲家の恋愛を事細かに、嬉々として(?)語る教授の姿に 「先生はもしかしてスケベなのでは・・・」と疑っていた私には たかが色恋沙汰が、何故作曲家の命に関わるような革命などの歴史的背景や病気などと同列に、 時にはそれ以上に重要視される事もあるのか理解できませんでした。 ところがある日突然私は知ることになります。 恋というものは自分の意思ではどうにもならない、 まさに天災のごとくの強烈さをもってやってくるということを。 「人間は何処から来て、そして何処にいくのか?」 この疑問こそが全ての学問の始まりだと思っている私は どこから湧いてくるのかわからない”恋”という激情にもこの問いへの答えのヒントがあるような気がして ”音楽”すなわち”心の旅”を楽譜に記してゆく作曲家にとって ”恋愛”は神の啓示のようなものだったのではないかと考えました。 また恋をすると同時に孤独も知る、と云いますが、 咽喉が渇いている時ほど、何でもない水が美味しく感じられるように 普通のドミソの和音がとてつもなく美しく感じられる時は孤独な時にほかならない。 残酷な事ですが、作曲家の孤独があのような美しい音楽を生み出したという側面もあるような気がします。 <おしゃべりプチコンサートVOL.2 序文 2000年8月> ♪プログラム ベートーヴェン:ソナタ「熱情」 ベートーヴェン:エリーゼのために ショパン:子犬のワルツ ショパン:ワルツ第7番 ショパン:幻想即興曲 ブラームス:インテルメッツォOp.118-2 ショパン:バラード第4番 戻る