放浪のヴァイオリニスト:エドワルド(エド)・レメーニ
1800年代を代表するヴァイオリニストといえばヨアヒムの名が挙がるだろう。
貧しいユダヤ人家庭に育った彼が、ヨーロッパを制覇するヴァイオリニストになり、
大作曲家から献呈を受けたり、世界中のヴァイオリニストの卵達が彼の元を訪れる程の重鎮になった事は
現在も残る多くの資料や伝記から簡単に知ることができる。

そんなヨアヒムと対照的なのが、ハンガリーのレメーニ(1828〜1898)である。
若きブラームスと演奏旅行をしたり、
ブラームスが「ハンガリー舞曲集」を出版した際には
自分の演奏から盗作したとクレームをつけたりという事でのみ知られており
ブラームスの伝記の中では「セコイ人」というイメージで書かれる事の多い人物でもある。
ハンガリーの革命の志士という彼の英雄的側面はあまり語られる事はないどころか
そういった事も「血気盛んな単細胞」的に扱われる事すらある。

私がそんな彼に興味を持ったのは
彼がアフリカやアジアのような、当時のヨーロッパ至上主義的な視点から見たらいわゆる「僻地」を、
ベートーヴェンやバッハを引っさげて演奏旅行をしていた事を知ったからだ。
日本の鹿鳴館での演奏も記事に残っており、「眼光鋭く禿げ上がった・・・」などと記述されている。

レメーニの事をもっと詳しく調べようと心当たりを探ってみたが
たとえばグローヴ音楽事典のレメーニの項の参考文献リストを当たっても
私には書籍すら見つける事ができなかった。
恐らく日本ではレメーニの研究は無理だろう。

しかし私達は現在、ヨアヒムから多大な遺産を受け取っているが
レメーニからもそれに負けない程の大きな学びが得られるはずだと私は思っている。







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