コメニウスJohann Amos Comenius(1592-1670)
−簡単なプロフィール−
生地:モラヴィア 宗派:プロテスタント(チェコ兄弟教団)→ハイデルベルク大学でカルヴィニズムの影響を受ける 職業:教育学者・哲学者・思想家・社会改革者 一般的な称号:「近代ヨーロッパ教育学の創始者」「国民教育の父」
−コメニウスの提唱した生涯教育構想「汎教育」−
思想 「あらゆる人が、あらゆる事柄を、あらゆる面にわたって」 Omnes,Omnia,Omnino 目的 すべての人間に、すべての事柄を教え、すべての人間をイエスキリストにあって完全なものとする。(「汎教育」序文) 教育に必要なもの 汎学校・汎教科書・汎教師 学校区分 1.誕生前の学校 2.幼児期の学校 3.児童期の学校(バッハの所属した年代)
第一学年スミレの園文字の初心者 読み書き。文字を綴っている者の段階。読んでいる者の段階 書いている者の段階に3区分し、それぞれの段階で、理論的にも実践的にも学習すると同時に サイコロ遊びでアルファベットを学んだり、速記の競争をしたり、正しく書く競争をしたりするという、 遊びながらの練習が授業の柱。
第二学年ばらの園世界図絵 全世界の事物。物事を実際的に、又感覚を通して、ありのままに学ぶということである。 その場合に辞典を利用しながら、単語を短文にまで組み立てる事を学ぶ。
第三学年緑園児童の倫理学 道徳教育、神と隣人との交わり。第二学年で学んだ実物を利用し、比喩的な格言として、倫理的な命題(たとえば「水の表面は何処までも平らです。」ですから人間も平等であるべきである、ということ。)を学ぶ。
第四学年知恵の迷宮バイブルの歴史 神の啓示、聖書、人類の歴史等。演劇にして、対話体にして聖書を学ぶ。
第五学年バルサム樹バイブルの精髄宗教教育、救済、罪、義認等。直接聖書を学ぶ。
第六学年魂の楽園スフィンクス読み書き、汎知の完成。燐国語。宗教的な事柄や道徳的な事柄を謎々、お話、寓話、比喩で学ぶ。
4.青年期の学校 5.若者期の学校 6.壮年期の学校 7.老年期の学校 8.死の学校
−コメニウスにおける教育とは−
(コメニウスの教育思想〜迷宮から楽園へ 藤田輝夫編著 法律文化者p17~18より抜粋) 教育の意義 コメニウスの思想の最高統一原理は「神」である。 そして人間は神の被造物の中で「最高の・最も完璧な・最も卓越した」(大教授学1章)ものである。 神の姿似である人間の究極の目的は「神と共にある永遠の幸福」(大教授学4章1節)であり それに至るために現世において努力すべき従属的な目的は、人間が T.理性を備えた被造者−全ての事物を知るものとなり U.被造者の支配者である被造者−全ての事物と自己を支配するものとなり V.神の姿似であり喜びである被造者−全ての事物と自己を神にかえす者となる事である。 これらの三者は更に T.学識(Eruditio) U.徳(Virtus)又は徳行(Mores) V.神に帰依する心(Religio)又は敬神(Pietas)と言い換えられている。 学識とは様々な事物、技術、言語をことごとく認識する事であり 徳とは全ての行動が内面、外面双方において釣り合いが取れている事であり 神に帰依する心とは人間の魂を神に結び付け、引き寄せる内面の畏敬の事である。 人間の卓越性は、まさにこれら三者の中にあり、その種子は自然に人間の内に生来備えられている。 それゆえ、 「知恵ある者、徳行を備えた者、聖なる者となることは人間にとってむしろ自然なことである」(大教授学5章25節) しかし、これらは祈りにより、学習により、行為によって獲得されるものであるから、 コメニウスは 「教育されなければ人間は人間になることはできない」(大教授学6章1節)と述べて 全て人間として生まれてきた者には 「貴族の子供も身分の低い子供も、金持ちの子供も貧乏な子供も、男の子も女の子も」(大教授学9章1節) 普遍的な教育を必要としていると主張している。
−コメニウスのラテン語教育に関する言及−
「大教授学」第22章 言語の教授方法より 「言語の学習は事物と平行して進まなくてはならない」(同じ教科書で事物と言語の双方を同時に学ぶ) 「ある一つの言語全体の認識は誰にも必要ではない」(年齢に応じた学習〜子供向けの教材) 「大教授学」第19章 教授の際に僅かな労力で敏速を得る方法より 「僅かな労力で、愉快に、着実に」 「あらゆる学習対象を豊富に高い密度で精密に含んでいて、文字通り全宇宙の ・(魂の中に描き出されなくてはならない)映像のような教科書こそ、 私達が申しております・平易の法則・着実の法則・労働軽減の法則に合致するものに相違ありません。 私が心から望み求めておりますものは、あらゆる学習対象を 親しみやすく誰にでもわかりやすく見せてくれる教科書です。」
−コメニウスの思想哲学−
ルネッサンスヒューマニズムの影響 宇宙(マクロコスモス)に対比された小宇宙(ミクロコスモス)としての人間の存在。 神は世界を創造するにあたって、自分の作品の原型(イデアIdea)をあらかじめ心に描き、 それに従って作業した。 世界の創造は決して恣意的にではなく、あらかじめ心に描き、それに従って作業した。 さらに神は人間を自己の姿似として創造した。 その際、神は世界を予見された数、形、重さに従って配置しただけではなく その同じ数、形、重さを、自己の姿似としての人間に刻み込んだのである。 人間は原型を把握する力を神から与えられた。 この世の生命の目的は、永遠の世に進むための準備である。 生涯をよく過ごしたものでなければ、よき死は期待できない。 よく至福に死ぬ術は、人間がこの現世でよく至福に生きる事に他ならない。 影響を受けた人 ◆トンマーゾ・カンパネッラTommaso Campanella(1568~1639) ドメニコ会修道士 ユートピア的国家論「太陽の都」 ◆ハインリッヒ・アルシュテットJ.H.Alsted(1588~1638) 「百科全書」「記憶術体系」